みどりのゆとり
太田空
敷地(現萩丘小学校)は浜松市中区の三方原台地の上に位置する。左右を姫街道、バイパスの交通量の多い道路に挟まれ、近隣には航空自衛隊があり、喧騒な住宅街に囲まれている。しかしふと脇を見ればそこには点々と緑地化された空地が無数に広がる。この緑はバッファゾーンとなり、喧騒な住宅街のなかに静寂をもたらしている。それは密集した街に余白をもたらし、どこか“ゆとり”が漂う。
このゆとりを小学校というスケールの敷地に落とし込み、地域の象徴性を持ちながら街に馴染み共存することを目指した。
小学校は自然観察の場としてビオトープを有し、理科の動植物の観察や図画工作などの生徒の学びの場であるとともに、地域交流を育む場として積極的な活動が行われる。地域の緑地というレイヤと重ねることで、用途を共通させるとともに、敷地にゆとりを内包する。それは外部(地域)との関係から次第に内部(生徒・先生)の親密な関係へと性質が変化するとともに、各々の関係性を柔らかく紡ぐバッファゾーンとして機能する。
教員講評
学校周辺にいまだに点在する緑地に注目した。学校という存在が、地域のコミュニテイに馴染んでいかせるために、周辺環境との同化を仕込むという手法を発見したのは評価に値する。いくつかの緑豊かな中庭を持ちつつ、オープンスクールタイプの開かれた教室配置は丁寧で完成度が高い。平面に様々な活動を期待させる仕掛けが見られるものの、新たな教育環境のワクワクした空間的飛躍に達していないのは残念である。(田井)