[1年]建築設計・基礎 第3課題

自由設計課題『ずっと居たくなる空間』

担当教員:脇坂圭一/佐藤健司/金子敦史
担当SA:塩澤侑杜/武井和也/松原成美

課題内容

第1課題では日本を代表する建築家・前川國男の手掛けた木造住宅である前川邸のトレースを通して、また、第2課題では国内外の建築家による名作住宅のプレゼンテーションを通して、建築家または各作品に固有の思想や空間、構造に触れながら、製図・作図に関する技能を学んできた。第3課題では初めての自由設計課題に取り組む。本課題以降、自らのオリジナルの思想やコンセプトを立て、それを三次元空間として構想し、そして二次元媒体として表現していくことになる。建築の設計においては、人の営み(行為)や立地(環境)を考慮しながら、そこにしかない、相応しい空間を構想し、構造体(人工環境)として立ち上げるための図面や模型を作成していく。その方法は設計者により多様であり、実際には、社会、空間、構造に対する思考を反芻/循環させることになる。第3課題では、「ずっと居たくなる空間」と題し、一人の人間が一日(数時間)過ごす空間を設計する。空間の大枠は5.4メートルのキューブ内に納まるようにする。大枠に納まれば、幾何学的形態は自由とする。人間がずっといたくなる空間とはどのような空間だろうか。例えば、天井に穴を開けたとき、その穴から光が差し込み、その光は太陽の動きと共に変化しながら壁面や床面を照らしていく。無機質な建築空間が、光という環境要素の存在によって色づき、ずっと居たくなる感情を引き起こすはずである(ちなみに、「天井に開けた穴」の事例として「パンテオン」を参照してほしい)。光に限らず自然環境や社会環境などの変化を建築空間に引き込む空間のつくり方は様々なあり方が存在するだろう。逆に、内部空間が周辺環境に影響をあたえることもあるだろう。なお、本計画においては、水廻り(トイレ、洗面等)は考慮しなくても良い。

初めての自由設計課題では、既成概念にとらわれず、純粋に「ずっと居たくなる空間」とは何かを思考し、実感を持って、楽しく設計してほしい。さて、建築設計においては、人間の行為と形態(の操作)の関係性が重要となる。人間の行為とは、くつろぐ、お喋りする、歌う、観る/見る、寝そべる、泣く、考える、無になる……などなど多様に考えられる。どのような体勢で、どのくらいの時間、どんな環境で過ごすとき「ずっと居たくなる空間」になるだろうか。形態の操作とは、床、壁、天井(屋根)、開口(窓)といった建築の部位を、傾ける、折り曲げる、削る、うがつ、分ける、並べる、ずらす、離す……など、多様に考えられる。このような単純な操作によって創出された空間において、われわれの身体は環境の変化を知覚する繊細な感覚を持ち合わせているはずだ。そして、その反応としてある行為が誘発され、あるいは感情が湧き起こり、形態⇄行為、形態⇄感情はinteractiveな関係を持つことになる。

初回では、今までに体験した「ずっと居たくなる空間」をA3シート(枚数適宜)にまとめ、提出、発表してもらう。どんな空間体験を通じて、どういった行為が誘発され、どういった感情が湧き起こり、ずっと居たくなったのか、スケッチや図面(二次元・三次元)、テキスト(またはキーワード)、模型などを用いて表現してほしい。

設計条件

  • 規模:幅5,400mm×奥行5,400mm×高5,400mm
    (ボリュームの最大寸法、地下を利用する場合は地下の最下面から計測する)
  • 用途・敷地:各自設定。