呼吸する建築
有田晃己
浜名湖という大自然の中に浮かぶ人工物、浜名湖大橋。現在駐車場と道路でしか利用されない人工の島「中之島」が中央に聳える。近年、水質の変化や温暖化の影響から生態系の異常が見られる湖の再生計画とする。島はまるで呼吸をするように他者を引き込み、排出する。島の成長と共に浜名湖は水質と生態系を取り戻し、かつて見られたような人、物、文化の往来を再構築する。道路=「線的」な軸線が浜名湖に骨格を作り、環境を蘇生することを目的とする。浜名湖が汽水湖であることもあり、建築的にも汽水域的中間領域を多く用いている。そこでは、人間だけでない多くの生物や植生が共に生きるのだ。長い時間をかけて、人間を含む様々な生物が建築を作る、侵食するような状態も「自然」と呼べないだろうか。人間のためでは無くなった建築も生物のために残り続け、新しい生活と生業、循環が生まれる。履歴は残り、更新を続けることで初めて「共生」した建築となる。
教員講評
僕は浜松に住んでいるのですがこのような素敵なサイトがあるなんて知りませんでした。よく見つけたなと思うと同時に、ここまで展開していく力も非常にあるなと思い、結構感心しています。ここが島だと思わなかった。(中畑)
人間が環境をよくしようとした、浜名湖の水を綺麗にしすぎた結果生態系が悪くなってしまった。それをもう一度、人間がこの生態系の中に入っていきながら作っていけるか。その限界を探っている点が面白いと思いました。(金子)