ふくろいと共に
伊藤響
この住宅は、東海道と県道が交差する場所に建つ。隣には東海道本陣、向かいには公園があり、地域の人々のコミュニティの場所となっている。
住居者は家族ではないため個人の部屋は独立しているが、それらの中心に共有スペースを配置し、屋根勾配や建物を中心に向けることで、ゆるく内のつながりが生まれる。個人の建物には搭状の小さな個人スペースを設け、自分の部屋にいながらも、さらに自分だけの空間をつくり出す。外から見ると、住宅から塔が突き出ているように見えるため、地域のランドマーク的な存在にもなればと思う。
外部空間には、袋井市の木・花・鳥であるキンモクセイ・コスモス・フクロウを取り入れ、それぞれの建物の周りに配置した。そして、これらを巡るように、東海道と県道をつなぐように道をつくり、地域住民も通り抜けできる。
ふくろいと共に、この場所で過ごす時間や暮らしを楽しんでもらいたい。
教員講評
居住者の設定から計画できる家の課題にあたって、伊藤さんは血縁関係がない男女4名が住まう家を考えている。構成としては、個人の私空間が内側にくる入れ子形式の各棟とそれらの中心に4人の共有棟が配されている。また、私空間と共有棟は塔状に伸び、各ヴォリュームから突出している。公と私を階層的なものとしつつ、逆転や越境が各所で起こっており、一瞬、理解しづらいが、それら2つの関係を、身体感覚で問い直し、構成し直していることを評価した。(彌田)