ヘルツォーグ&ド・ムーロン「ルーディン邸」
仁藤千裕
この住宅の外観は典型的な住宅のイメージを持っているといってよい。勾配屋根、大きな煙突といったものが子どもの描く絵を思い起こさせる。家の形象をそのまま具現化したような印象を受けるが、家の中に入るための玄関が立面地にないこと、すなわち、その家が立地する地面全体が外周から完全に浮いている点が特徴的である。また、左右対称を基本とした平面と立面、大きな切妻型の屋根を強調し、煙突を残したデザインであるこのノスタルジックな形態は、この建物がタンジュン素朴な住宅でしかないことを示す。この建築物を深く知り、傾斜した屋根は雨風や危険から身を守るシェルターで、煙突は家庭という物理的、または、心理的な暖かさを象徴するなど、典型的なかたちの住宅だからこそ生み出すことのできる建物であり、人との関わりを表している建築物だと考えた。
教員講評
世界共通の慣習的な形式である切妻屋根の住宅が、傾斜した地面から持ち上げられた基壇(スラブ)に載り、基壇の底から潜り込むようにアプローチする、慣習を打ち破る構成をとる。スラブ下のアプローチを示す内観パース、全体の構成を示す外観パースは、色鉛筆を用いて彩色され、そのタッチはムラ感のある素材の質感をよく表現している。模型は稚拙だが、表面の質感を表現しようとする姿勢は良い。(脇坂)