冨永譲「小田原の住宅1978」
守屋真二
野菜畑を含んだ600坪ほどの広い敷地に、ポツンと建てられているこの住宅は若い夫婦が住むことを想定している。若者らしい派手さを表すかのように外壁の色として白色がふんだんに使用されている。周囲から見れば、一見ただの直方体の建築物のように思えてしまうが、内部を覗くとガラッと変わって見えてくる。内部では外部と違って、円弧に加工された壁やレベル差のある床面が空間を切り裂くように配置されている。梁や柱が壁と分離して設置されていることも、この住宅の大きな特徴の一つだ。個人的な感想として、基準とのズレをわざと生じさせている点が特に印象深く感じた。通常梁や柱は壁の中にあるものだが、あえてそれらを壁と分離させて設置することで美しく見せようとしている。梁や柱でここまで美しくなるものなのかと、とても驚かされた。
教員講評
模型が最も優れていた。建築模型は空間表現が目的であるため、ジオラマのような実物感はそれほど大切ではない。この模型は、決して上手ではないが、木架構とそれ以外の建築要素の間にある空間性がとても心地よく、実際もこのような空間だろうなと思える、とても良い建築模型だった。(金子)