スプロール集住宅
疋田大智
地方都市に存在する空虚と共存する家族を想像した。敷地内に空いた大きな空虚に対し、4畳半の間を中心に設備機能を集積させ、中間領域にあたるテラスは暮らしを豊かにさせた。細胞型空間構成は平面的・立体的な関係性をも生み出し、血管のように動線を建築全体にめぐらすことを可能にした。こうして地域に根付いた“生業・学び・食文化”の間へと波紋していくことにより、現在の生活スタイルと地域文化の新たな関係性を提唱する。
教員講評
中央部が絞られた難しい敷地に対して、住まい方から導き出されたユニットを、通り抜けの路地を一本通したうえで、周辺の建て逼った環境を読み解きながら変化させて重層配置し、細部にいたるまで計画を行き届かせた意欲的な作品。各住戸をコンパクトに「まとめる」意識が働いたためか硬さは感じられたが、全体に積み上げたヴォリュームの屋根をHPシェルで柔らかくうねらせ、周辺環境への圧迫感を軽減させるとともにデザインの方向性を「まとめる」手法は秀逸。(佐々木)