開展する核
平間聖規
法多山は725 年に開創され1300 年続く歴史あるお寺である。真言宗の始まりは空海が中国から教えを伝来し、東寺を教場、高野山にて修行をしている。社会とのしがらみや雑踏から開放され、自然に溶け合うために人里離れた高野山修行の地をとしている。真言宗別格本山である法多山もまた俗世と離れた地にて修行の場となっていた。そんな法多山の門前町は宗教、スポーツ、芸術の修行の地として他にはないポテンシャルを秘めている土地である。敷地内は街の方向である西側からは建物が密な状態で配置され、法多山に向かうにつれて疎になっていく。一方で自然は法多山から降りてきて門前町に溶け込んでいくように分散していく。門前町には街とお寺を繋ぐ場所であり、それぞれのものが共存し、交わり、この場にはグラデーションが生まれる。
教員講評
法多山が修行の場だという根本的な背景を元に、近隣のスポーツ施設「エコパ」の利用者や芸術家達が、自己鍛錬をする場として計画された。それぞれの修行としての滞在が混在することによって、相互の狭い世界観は徐々に溶融して混ざり合うことが意図された。混ざり合うことでさらに鍛錬は昇華される。問題は空間化である。あえて散在された単純なボリュームは丁寧に配置され期待できるものの単調に過ぎ、混在の具体的イメージに応じた空間的仕掛けがあるとさらに良かった。(田井)