居場所を編み出す架け橋
塩澤侑杜
遥か1300年前から佇む法多山尊永寺は、行事やイベント時などの「非日常」は出店や屋台が立ち並び、周辺の道路が渋滞するほど人々の賑わいを魅せるが、「日常」は参拝者の人数は激減しシャッター街と化す2つの側面を持つ寺である。商業施設が立ち並ぶ商店街の上部には自然を一望できる千鳥状のデッキが広がる。”商店街が立ち並ぶ動線”と”風景を魅せる動線”が絡み合い、「非日常」に備え行きと帰りの動線を分けるほか、全ての施設を集約するように全体の統一性を図る。また自然を求め都会から移住してくる家族が多いという側面を持つ地域性を利用し、門前町に保育園と福祉施設を複合させ、尚且つ寂れてしまった商業施設との連携を図る。これにより「日常」に賑わいを作り出す。この地で育つ子供たちが自然とともに成長し自身が高齢になった時、当時の福祉施設の方との記憶がこの地へ呼び戻すきっかけとなることだろう。法多山周辺に住んでもらう、または将来この地に戻ってきてもらうことで法多山門前町が再生することを期待し提案する。
教員講評
法多山門前町の再生計画である。現在の門前町は暗渠となった小川の上に建物が立ち並んで形成されている。その小川を目に見える形に再生するとともに、周囲に配された建築群の屋根の上をスロープやブリッジで連結することで、3次元的な「参道」を計画している。中央を流れる小川の両岸の散策路と屋上の歩行者路とで、門前町に立体的な回遊路が形成される。屋上の歩行者路はウッドデッキで仕上げられているが、もう少し多様なデザインで構成されていれば、さらに良かったと感じた。(佐藤)