[2022]Postscript
この作品年鑑には、静岡理工科大学理工学部建築学科2022年度の設計科目における学生作品、意匠・計画系学生の卒業設計、構造、材料・生産、環境・設備系学生の卒業論文が収録されている。この年鑑の作成にあたり、県内外の多くの企業・団体の方々から協賛をいただくとともに、地元の袋井市から支援を受けた。ここに厚くお礼申し上げたい。
建築学科の新入生は「図学」において製図の基礎を学んだ後、1年次後期の建築設計・基礎から本格的な設計課題に取り組む。設計課題は「小空間の設計」と「住宅の設計」から始まり、2年次の「コミュニティ施設」「小美術館」「こども園」「集合住宅」で、一通り完了する。ここまでは、建築学科の学生全員が履修する必修科目である。3年次の設計授業は選択科目となり、例年、当該学年の約半数の学生が履修する。残り約半数の学生は、エンジニアリング系の研究室に所属し、本格的に専門的な探求へと向かう。
意匠計画系の3年生が履修する設計課題は、「図書館「」ホールを含む文化施設」「小学校「」都市スケールのプロジェクト」であり、多様な機能を組織化し、一つの統合体へと纏めあげる能力を養う内容となっている。そこには、ランドスケープ・デザインやアーバン・デザインも含まれてくる。ただし、2022年度の3年生は旧カリキュラムでの履修となるため、図書館に代わり集合住宅が設計課題となっている。
設計課題は基本的に前期と後期の計4課題である。7~8週間の期間で1つの課題をこなす。課題説明を受けた後、敷地とプログラムのサーベイから始め、ボリューム・スタディ、中間発表を経て、プレゼンテーション用の図面と模型の作成、講評会という流れになる。
実際、7~8週という期間は極めてタイトである。講評会では、エスキスを担当した常勤・非常勤の教員による講評を受ける。プレゼンテーションの後、教員の合議により、最優秀賞、奨励賞などの賞が決定される。最優秀賞には「えんつりー賞」、奨励賞には各審査員の名を冠した「個人賞」、もう一歩という作品には「えんがわ賞」という名称が与えられる。
この年鑑には、1年生から3年生までの各課題での受賞作品を設計者自身の言葉と共に収録している。設計の授業は、学生と教員との1対1の議論、すなわちエスキスを基本とするため、多数の非常勤教員の協力のもとに成立している。2022年度に非常勤教員として設計教育に参加頂いたのは下記の方々である。この場を借りて、深く感謝申し上げる。
建築CAD1・CAD2|森下陽 ( アンプ建築設計事務所 )
建築設計・基礎|金子敦史 ( 合同会社金子敦史建築計画工房 )
建築設計・基礎|彌田徹 (403architecture[daiba]・共同主宰 )
建築設計A1|日高恵理香 ( 日高恵理香建築設計事務所 )
建築設計A1|後藤周平 ( 後藤周平建築設計事務所代表 )
建築設計A2|渡辺隆 ( 渡辺隆建築設計事務所 )
建築設計A2|佐々木司 (S.A.S.archi)
建築設計B1|八木佐千子 ( 有限会社ナスカ一級建築士事務所 代表取締役 )
建築設計B1|長谷川寛 ( 株式会社竹中工務店名古屋支店設計部設計グループ長 )
建築設計B2|針谷將史 ( 針谷將史建築設計事務所 )
意匠計画系の学生は、4年次に卒業論文(卒業研究)と卒業設計を行う。4年生前期での卒業研究は、卒業設計のための基礎調査と位置付けられる。後期での卒業設計は、4年間の学生生活の集大成となる。敷地の設定や設計対象・設計プログラムの策定は自由である。何を、どこに作るのか、誰のためにつくるのか、そして作ったものがどのように地域社会に貢献することができるのか、学生は図面と模型で提示しなければならない。
卒業設計の審査はポスターセッションと個別のプレゼンテーションとの2段階で行われる。作品はポスターセッションで約半数に絞られ、その後のプレゼンテーションを経て、「最優秀賞」「優秀賞」「奨励賞」が決定される。この年鑑には受賞者の作品とともに、プレゼンテーションに進んだ作品を「発表者」として収録している。
構造、材料・生産、環境・設備系の研究室に進んだ学生は、4年次に前・後期通期で卒業研究を行う。研究対象は多岐にわたる。耐震構造、防災・減災、コンクリートの諸性状、エネルギー、地域環境などのテーマに関連した研究が行われる。研究成果は「卒業論文」としてまとめられるとともに、学科内で全教員出席のもと発表会が行われる。優秀な論文については学会や各種の研究集会で発表される。この年鑑には、構造、材料・生産、環境・設備系の研究室から各2編の論文が選ばれ、収録されている。
なお、建築学科の教育・研究は下記10名の常勤教員により遂行されている。学生定員は1学年50名であり、少人数教育が実践されている。
太田達見|教授 |建築材料・建築生産
丸田誠|教授|耐震構造
脇坂圭一|教授|建築計画・デザイン
佐藤健司|教授|建築・都市設計
崔琥|教授|防災構造
長尾亜子|准教授|建築意匠
石川春乃|准教授|建築環境(温熱)
田井幹夫|准教授|設計・意匠(デザイン)
鍋島佑基|講師|建築環境システム
林英昭|准教授|建築史、2023 年 7 月着任
2023年12月
佐藤健司