[3年]建築設計B2 第1課題

地域の未来をつくる小学校

担当教員:長尾/脇坂/針谷

課題内容

3年生後期の設計科目は選択科目である。3年生後期にはエンジニアリング系も含めて研究室ごとのゼミが始まる。そのため、例年、この設計科目の履修者は20数名程度となる。この時期の設計課題を通じて、習得すべき技能とは何であろうか。学生は、住宅から始めて、小美術館、こども園、集合住宅、そしてホールへと徐々に大きな規模の設計対象をこなしてきた。3年生の選択科目では、(1)複雑な機能をもつ集合体を組織化する能力、(2)単体の建築物の設計から、複数の建築物の集合体として、外部をも含めた環境全体を統合する能力、この2点に重点がおかれるべきと考えられる。そのことは、4年生後期の卒業設計へと連続してゆく。

多数のクラスルームの集合体として成立する「小学校」は、空間の組織化、すなわちプランニング能力を養うという観点からは、うってつけの題材である。しかも学生にとって、自ら6年間実体験した建築型であるから、その空間を熟知している。

ここでの課題は、自ら通った小学校を建て替えるという設定である。従って、対象となる敷地や周囲の都市的なコンテクストはすべて異なる。しかし、少子高齢化の流れの中で、現在の小学校が置かれた状況は共通する。国土交通省による2050年までの人口推計データによれば、静岡県全体で現在約500ある小学校のうち1/3は20年以内に消滅せざるを得ない状況にあることがわかる。現に多くの市町村で小学校の統廃合が進められている。近隣住区の理論では、小学校こそが地域コミュニティの核であるし、極言すれば、小学校を失うということは、その地域で子育てができない、すなわち地域コミュニティの崩壊を意味する。それは必然的にコミュニティの再編を促す。都市は居住人口7,000~10,000人からなるコミュニティ(=小学校区)の集合体であり、その再編が必然ということになれば、すなわち伸び縮みする都市計画の手法が探求されなければならないことを意味している。(佐藤健司)

静岡県の小学校区 / 児童数を赤の濃淡で示す(濃い赤の地域ほど児童数が少ない)