-創造の起点-
塩澤侑杜
静岡県はモノづくりの盛んな地域である。天竜杉をはじめ資源が豊富な地域であるが、近年林業は衰退傾向にある。そこで木工職人を居住者に加えることで職人の技術や知恵を通じ、商店街の活性化や林業の手助けとなることを期待する。本計画地Bでは店づくりではなく街作りを設計の主とし、商店街の活性化や静岡県の木材、林業の現状を学ぶ場を提供する。竹細工工房・瓦氏工房・染物工房には、計画地中央のものづくり体験教室で使うことのできる木材を置いたスラブを差し込んでいる。訪問者は敷地を巡り、職人の技術や知恵を目にするだろう。本計画は生活の領域を表に展開することで、街の人の「創造の起点」となるような風景を作り出し、新たな「住まい方・働き方」を提案する。
教員講評
商店街中央の入り組む敷地に対し、地上3mの高さに基壇をつくり小規模な木造群を立体的に散在させながら界隈性を創出しようとする試みに親近感をおぼえた。一方で、水回りなど住宅機能を最小限の空間単位に分解し、それぞれの生活者の動線が共有空間を介して交錯することで多様な交流を促そうとする挑戦に対し、計画の大部分を占める外部や半屋外の共有スペースにおける利用なされかたなど、具体的な説明が欲しかった。界隈性をもつ共有空間が、商店街に暮らし利用する人々の拡張領域となり、息づく姿が表出するからこそ、商店街の活気に直結するのではなかろうか。今後を期待し、一言添えておきたい。(佐々木)