2023.04.11

2023.1.20 かけがわ・けんちく夜会 第4回

第4回にご登壇いただいたのは仲建築設計スタジオの仲俊治さん。
「流れを編む建築-小さな経済圏-」というテーマで講演いただきました。

0 建築は発明 電話の発明 居住専用住宅の発明
産業革命後の居住専用住宅の発明は続けていっていいのか

1 住むと働く 写真家のスタジオ付き住宅
住むと働くを手前と奥で切り分けるのではなく、環境に従った構成で一日中回遊できる

2 居住専用住宅ばかりの都市はまずい 「地域社会圏」という考え方
ひとり世帯が増え、自助の行き詰まりより、「1住宅=1家族」は成立しないのではないか

3 Socialな循環:小さな経済 食堂付きアパート、 MA-TO
食堂付きアパート:用途複合の相乗効果を利用し持続的なモデルを構築
MA-TO:高架下に小さな小商い

4 《2つの循環を重ねる》 五本木の集合住宅
人の経済活動(交流の場)に、自然循環を重ね合わせたところに継続的な居場所をつくる
内外の中間領域としての仕事場、住宅内の中間領域としての水回りなど多くの中間領域で緩やかに繋ぐ

5 職住融合の展開 SCOP TOYAMA〈富山県創業支援センター/創業・移住促進住宅〉
縦糸(住む)と横糸(働く)を重ねて団地をセラミックス化する
横糸が増えると内部移動、接触の機会増加、そして空間の抑揚を生み出す

中間領域としてのアプリケーション/地域資源の循環
ちょっとずつやれる範囲で、大きな循環に参加できる。必要なアプリを取捨選択できる
外開きの小さな空間に埋め込みネットワーク化できれば大規模開発は不要ではないか

「編む建築」よりまちの中に属する建築のあり方を学んだ。

「計画」は、必然的に範囲と境界を生んでしまう。都市においても建築においても。ここに影響しうるさまざまな循環(Social, Ecological, …)に対しても同様に切り取って計画してきた。ただやはり循環と法的な境界には直接的な関係ない。切り取った範囲だけですべての循環を考えれない。かといって視野を広げ都市全体を対象に計画した場合、どうしても解像度が落ちてしまう。分担により範囲と境界を定められトップダウン型の要領で法的な区分けされてしまうのだ。

仲さんの〈食堂付きアパート〉は、この法的な境界を感じさせない。広域図に直接平面プランを描き込んでいるイメージ。街全体を計画するわけではなく、敷地で切り取るわけでもない。そうして生まれたプランは食堂、立体路地のハード面、事業スキームからみるソフト面の一致により境界が最も多様性を育むエコトーンになっている。関わりしろをつくりながら近隣住民を強制しない。講演の主題にもなっている「編む建築」は、大きな流れや小さな流れを束ねたり流れを円滑にしたりする建築と話されていた。政治家やデベロッパーとしてではなく、建築家だからこそ、範囲と境界を超えた「計画」が実現できたのだろう。

「建築も昔は百姓がやっていた。」鴨川市釜沼集落に泊まったある日、小さな地球の林さんと東工大の塚本さんらがいろいろ語ってくださった。地域は、身の丈にあった範囲で地域の方々とともにつくり上げてきたのだ。アーキテクチュアの語源、アルキテクトンの意味は職人の長。「身の丈」を最も熟知してきた専門家こそ建築家であり、これからの地域おこしに求められる存在であると確信している。

講演後、懇親会で仲さんに、地域社会圏主義の思想をそのまま地方のまちづくりに転用できるのか、問うた。地域社会圏はシステム化されている。つまりまちに転用する場合、範囲と境界を生んでしまう。仲さん自身も思想を具現化した時にできる範囲と境界に苦悶の表情を浮かべながら、システムを小分けにし、まちに差し込む提案をしてくださった。例えば、エネルギーなら地域内でマイクログリッド導入を検討するといった具合である。まちの分断を避けつつ、やはり選択肢は住民に委ねるということだそうだ。これが講演会最後にお話しされていたアプリケーションの話と繋がってくるのだろう。個人的な意見としては、地域社会圏はあくまで都市的なモデルで、地方では、アプリケーションを増やしていくこと道を検討していきたい。

田井幹夫研究室M2 金子大海