2026.6.14 現地調査をうけて考えたこと

現象を受け入れる存在感
富士市の都市景観は「火山=富士山」と「工場=王子製紙富士工場」という二つの巨大で異質な存在に特徴つけられている。
富士山は巨大で誰もが知る存在である。しかしその姿は決して固定化されていない笠富士や吊るし富士、ダイヤモンド富士、赤富士として表れ時には完全に姿を消す。
私は、ある晴れた日に池田屋ビルの屋上から富士山を見た際にあまりにも富士山がきれいに見えたので書割(映画のセット)みたいだなと思った。
つまり、私たちは、富士山そのものを見ているようで、実際には雲や光といった現象を通して富士山を知覚している。

一方で今回のプロジェクト敷地の東にある王子製紙富士工場もまた、このエリアを象徴する異質な存在である。富士駅北口東側に巨大な面積で鎮座し、高いボイラー棟や煙突は強い存在感を持っている。しかし工場内部は高い塀や緑地によって覆われ、その実態を市民が目にすることはほとんどなく、そこから立ち上る煙、雨上がりに漂うパルプのにおいを介してその場所で大規模な生産活動が行われていることに気づかされる。

富士山と製紙工場に共通しているのは、巨大で重厚な存在感を持ちながら、その実態が現象を介して知覚されていることである。
現象とは、雨が降ること、霧が発生すること、光が反射すること、風で旗が揺れることのように、目の前に現れる変化そのものを指す。富士市の景観は、物体によって成立しているのではなく、それらを取り巻く現象によって知覚されている。
その視点から今回の対象地である富士駅北口エリアを見ると、この場所もまた大きな変化の只中にあることが分かる。
駅前ではペデストリアンデッキや駅前ビルの解体が進み、訪れるたびに風景が変わっている。まるで富士山が天候によって姿を変えるように、駅前の景観も日々更新され続けている。
本町商店街でも同様である。普段は人通りの少ないアーケードが、軽トラ市の日には多くの人で埋め尽くされる。高校生が運営に参加し、中学生が太鼓を演奏し、縁石は椅子となり、アーケードの柱には紐が掛けられ、閉じられたシャッターは地域活動の展示空間となる。同じ場所でありながら、その時々の活動によって全く異なる風景が立ち現れる。
しかしその変化の中でも、王子製紙の煙突からは煙が上がり、富士山は雲の向こうに存在している。

ここから私は、今回提案するデザインもこれから不可逆的に変化する富士駅北口エリアに現象を伴いながらも強い存在感と場所の強さをもったモノとして計画していきたいと感じている。
常に変化しているけれども常に存在していてみんな知ってはいるけれどみんな違った印象を持つものとして計画する。
これが私が今回の提案を行う上での主題である。
M2 白瀧