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トオトウミ チェア・ベンチ|TOTOUMI Chair/Bench | 脇坂圭一研究室 | 静岡理工科大学
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トオトウミ チェア・ベンチ|TOTOUMI Chair/Bench

[設計]静岡理工科大学・ヒュッゲ・デザイン・ラボ/脇坂圭一+TERRY FIELDS /高橋広樹
[制作協力]静岡理工科大学 建築学生団 ASSIST
[製材]浜松木材工業
[Design]Keiichi Wakisaka/SIST + HirokiTakahashi/TERRY FIELDS+[collaborator]Architectural Student Group, ASSIST+[sawmill] Hamamatsu Wood Indastry Co., Ltd.

▌概要|「トオトウミ チェア/ベンチ」は、かつて「遠江(とおとうみ)」と呼ばれた静岡県西部において、自動車、二輪車、楽器などの製造業、林業と結びついた素材である鉄と天竜杉を用いたデザインとして名付けられた。大学キャンパスにおける交流空間において、学生、教職員をはじめとして様々な来訪者が利用する椅子とベンチである。

▌地理・歴史・産業|「遠江」とは、淡水湖である琵琶湖を有する「近江」(滋賀県)に対して、浜名湖を有する令制国として都からの距離を示して名付けられた。静岡県西部は自動車、二輪車、楽器などの製造業に加え、林業が盛んな地域である。「トオトウミ チェア/ベンチ」で用いた鉄と木は地域の産業と結びついた素材である。

▌素材|座面・背板に用いた「天竜杉」は、「吉野スギ(奈良)」、「尾鷲ヒノキ(三重)」とともに日本三大人工美林の一つである。杉材の中でも、脂身が強いため、耐水性が高く、赤みが強い特徴の天竜杉は、色味、手触り共に魅力的だったものの、外材に対して国産材は限られたコストに見合わなかった。林業が活力を失いつつある現在、県土の64% が森林で、うち72% が私有林である静岡県では、所有者による整備が行われずに荒廃が進んでいる。そこで、地元・遠州の製材業者との協力・連携により、地元産材を用いることが可能となった。

▌仕様・ディテール|椅子・ベンチの脚部は丸鋼13Φおよびフラットバー厚4.5mm でフレームを形成し、ブレースとして丸鋼9Φを用いた。
・丸鋼、フラットバーとも、黒皮材を用い、鉄そのものの表情を見せる仕上げとした。
・座面・背板には天竜杉厚30 を用いた。座面はD350 mm(椅子)、D350 mm(ベンチ背あり)、D200 mm(ベンチ背なし)とした。D350 mmの板材は寸法的に二枚を剥ぐことで所定の寸法を得た。脂身の多い天竜杉独特の赤身と白身のコントラストが美しい表情を見せることとなった。
・椅子・ベンチの背板は座面底部のフラットバーに直行して取り付けられたブラケットから持ち出した2 本の丸鋼に差し込むディテールとした。
・ベンチの座面底部コーナーは12mm で面取りし、軽快な印象を与える。一方、椅子の座面は、面取りせずに杉材のボリューム感を見せている。鉄、杉ともに、1 本1 本、一枚一枚の表情が異なる、ムラ感のある素材であることから、塗装は含浸系の透明色を用いた。

▌製作工程|製作には建築学生団体が参画した。まず、地域の製材業者へのヒアリングを通じて天竜杉や中間業者の現況について把握すると共に、杉材が出荷されるまでの工程を学んだ。家具工房では、椅子・ベンチの木部や鉄部の加工・組立・塗装作業に協力した。