2026.05.14

修士研究プレ調査 天竜エコテラス訪問

こんにちは、脇坂研究室M2の伊藤勢来です。

2026年5月1日 修士研究のプレ調査として、浜松市天竜清掃工場(天竜エコテラス)を訪問しました。今回は研究室メンバーも同行してくれ、施設見学とヒアリングを行いました。

 

修士研究について

私の修士研究のテーマは、「清掃工場における地域開放空間の計画特性に関する研究」です。

清掃工場は、現代都市を支える不可欠な施設でありながら、長年にわたってNIMBY施設(迷惑施設)として社会的周縁に置かれてきました。1975年以降は「清掃工場に見えない」外観を目指す設計が定着し、廃棄物処理というプロセスは市民の日常認識からさらに遠ざけられてきました。

一方で近年、武蔵野クリーンセンター(東京都)のように住宅密集地にガラス張りで建てられ、焼却工程を市民に見せながら屋上庭園や見学ギャラリーを整備する事例も現れています。デンマークのコペンヒルに至っては、ごみ処理施設の屋根がスキー場になっています。

忌避される施設が、地域に開かれた施設へと変わりつつある。その空間構成・動線計画・開放プログラムの計画特性を明らかにし、今後の施設再編に活かせる設計指針を提示することが、この研究の目的です。

そのきっかけは卒業研究にあります。私はと畜場の建築計画を研究し、社会的に必要不可欠でありながら地域から遠ざけられてきた施設の構造的問題を把握しました。そして私自身、「530運動」発祥の地である愛知県豊橋市の出身です。ごみと市民の関係が文化として根付いている土地で育ったからこそ、処理する施設と市民の間にも、建築を通じて関係を築けるはずだという問いが生まれました。

 

天竜エコテラスとは

浜松市天竜清掃工場・天竜エコテラスは、2024年4月に稼働を開始したばかりの新しい施設です。処理方式はシャフト炉式ガス化溶融炉、処理規模は399t/日(199.5t/日×2炉)。低地の旧敷地から移転し、山側の敷地を新規に造成して建設されました。設計・施工は日鉄エンジニアリング、運営は株式会社浜松クリーンシステムが担っています。

浜松市の中心部からはかなりの距離があります。山あいの敷地に、煙突と大きな建物が静かに立っています。

見学して感じたこと

施設の見学ルートは3階のプラットホームを起点に設けられており、①プラットホーム→②もえないごみピット→③破砕・選別設備→④もえるごみピット→⑤中央制御室→⑥溶融炉・燃焼室・ボイラ→⑦蒸気タービン・発電機→⑧ECOCOROフォレストという順路で、焼却処理の全工程を連続的に体験できる構成になっています。

見学通路は全体的に薄暗く演出されており、照明を落とした空間の中で、ガラス越しに機械が動く様子が浮かび上がる。「工場を見に来た」というより「展示を見に来た」という感覚に近く、空間デザインが来訪者の心理的なハードルを下げる役割を果たしていると感じました。動線上にはARコンテンツや環境学習展示も組み込まれており、処理工程の可視化と教育的機能が一体的に設計されています。スマートフォンをかざすと蒸気タービンの仕組みがAR映像で現れる仕掛けは、子どもから大人まで楽しめるものでした。

印象的だったのは、ガラス越しに広がるもえるごみピットの光景です。巨大な吹き抜けの空間に次々とごみが投入され、大きなバケットが縦横に走る様子を目の当たりにする。広島市環境局中工場のような都市軸との連動や透明感とは異なりますが、作業の視覚的開放性という点では天竜エコテラスに独自の迫力があります。

見学者通路のスタート地点

ECOCOROフォレスト

もえるごみピット

見学様子

ヒアリングで分かったこと

見学だけでなく、施設の担当者へのヒアリングも行いました。

印象的だったのは、見学者数の話です。天竜エコテラスは年間4,500人の来訪を想定して設計されていますが、実際にはそれを上回る人が毎年訪れているとのことでした。

来訪者の内訳として特徴的なのは、小学4年生の出前授業が見学カリキュラムに組み込まれている点です。ごみの分別や資源循環を学ぶ授業の一環として、子どもたちが実際に施設を訪れ、処理工程を目で見て学ぶ機会が制度として設けられています。さらに地域住民の見学者も毎年継続して訪れており、施設が単なるインフラとしてではなく、地域の環境学習拠点として定着しつつあることがうかがえました。

設計時に想定した来訪者数を実態が上回っているという事実は、清掃工場が「開かれた施設」として地域に受け入れられていることを示す一つの証拠だと思います。

また、余熱を活用した温室栽培がすでに運営されており、さらにチョウザメの養殖場が現在建設中であることも確認しました。ごみを燃やした熱が、農業・水産業へとつながっていく。竣工からわずか1年の施設で、余熱利用による地域還元がここまで展開されていることは、今後の研究においても重要な事例になると感じました。

ヒアリング様子

今後について

今回のプレ調査を経て、改めて「地域開放空間をどう設計するか」という問いの具体的なイメージが見えてきました。空間構成・動線・余熱プログラムの三つが絡み合いながら、施設と市民の関係がつくられていく。

今後は静岡県内の複数施設での現地調査・ヒアリングを進め、配置図・平面図・断面図をもとに計画特性の類型化に取り組みます。そして最終的には、修士設計として清掃工場の設計提案へとつなげていく予定です。

「迷惑施設」が「地域の核」になれるのか。その問いに、建築の側から答えを出したいと思っています。

集合写真

 

最後は研究室メンバーで磐田市にある「ぐるめ亭」で昼食を。