2026.01.30

オフグリッド住宅のリサーチブック執筆!

こんにちは。

オフグリッド住宅のリサーチブックを研究室メンバー(M2:木下,M1:伊藤,梅田(主担当))で執筆をしました。

戸塚先輩(2024年卒業)が取り組まれてきた研究の流れを引き継ぐ形でスタートしました。

背景には、2022(令和4)年6月の建築物省エネ法の改正があります。
2025(令和7)年4月からは、これまで「説明義務」にとどまっていた小規模住宅(300㎡未満)も含め、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務化されています

これは、2050年カーボンニュートラル、2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)といった国の目標に向けた動きの一環であり、エネルギー消費量の約3割を占める建築分野の役割の大きさを改めて実感させる出来事でもありました。

こうした状況を踏まえ、本リサーチブックでは、近年国内でも事例が少しずつ増えてきている「オフグリッド住宅」に着目しました。
実際に日本で建てられているオフグリッド住宅を対象に、建築家や居住者へのインタビューをもとに特徴を整理し、リサーチブックとしてまとめました。

リサーチブック表紙

パッシブハウスをさらに乗り越える建築の形式として、オフグリッドハウスがどのような可能性を持つのかを探ることを目的として、研究室で講演会を過去2度(第1回:2023年11月 ご講演者:菊池佳春さん/菊池佳春建築設計事務所 , 第2回:2024年1月 ご講演者 紺野透さん/temp+)開催しました。

講演会ポスター(M1伊藤作成)

オフグリッド」とは、電力やガスといったエネルギーの送電網(グリッド)に接続せずとも、エネルギーを自給自足できている状態を指します。

たとえば、太陽光パネルで発電し、バッテリーに蓄電する、太陽熱で温めたお湯を貯湯タンクにため、給湯や暖房に使う、薪コンロを用いてガスを使わずに調理するといった複数の装置を組み合わせることで、オフグリッドな暮らしは成り立っています。

一方で、「高い環境性能=良い空間デザイン」とは必ずしも言えないことも、感じています。たとえば、性能を優先するあまり、魔法瓶のように密閉された息苦しい空間が生まれてしまうこともあります。しかし私たちは、本来、刻々と変化する光や風、温度といった自然の揺らぎを許容する不均質な空間にこそ居心地の良さを感じることを、経験的に知っています。

私は現在、修士1年ですが、研究室に配属された2023年以降、オフグリッド住宅の見学に何度も同行させていただきました。実際に現地に足を運び、設計者や居住者の方から話を聞くことで、図面や写真だけでは分からないリアルな状況を体感することができました。

まほろの家@東京都田町(訪問者:脇坂先生・M2築地・M1伊藤・梅田)

本の執筆を本格的に始めたのは、2025年5月です。

2023-2024 ヒアリングおよび資料作成、論文投稿(戸塚)
2024-2025 リサーチブック用資料作成
2025-2026 リサーチブック用資料とりまとめ、リサーチブック執筆

書籍制作全体をリードする経験は初めてで、浜松市在住のデザイナー・桑田亜由子さんにご指導いただきながら、試行錯誤の日々が続きました。

桑田さんのスタジオにて打ち合わせの様子

最初は全体の方向性や台割りを考え、どのタイミングでどんなコンテンツが必要か、文章とデザイン、そしてスケジュールを同時に考えていく必要がありました。

最終的には約300ページというボリュームになり、院生3名で分担しながら制作を進めました。データの統合やデザインの統一には何度もつまずきましたが、迷いながらも少しずつ形になっていく過程は、非常に学びの多い経験でした。

オフグリッド住宅には専門用語が多く登場します。文章だけで説明するのではなく、図やイラストでビジュアル化することの重要性を強く実感しました。(アイソメ図)

最もエネルギーを使ったのは、コンテンツの修正と、全体の見せ方を最終形にまとめていく工程でした。修正が入るたびに元データに戻り、13事例全体のバランスを再調整する作業は、地道ですが欠かせないプロセスでした。スケジュール管理や想定外の修正対応など、執筆の難しさを身をもって学ぶことになりました。

書籍制作を通して、制作アプリの操作スキル、構成の考え方、情報の見せ方・伝え方を体系的に学ぶことができました。

本を通して伝えたかったのは、「オフグリッド住宅が絶対に正解」ということではありません。あくまで一つの選択肢です。特に地方では「自分たちの周辺くらいは自分たちでエネルギーをまかなえる」状態を目指すことも、大きな意味を持つのではないかと考えています。