【レビュー】建築設計B1 第二課題 最終講評会|「個別最適で、協働的な学びの場とは?これからの小中一貫校」
こんにちは、脇坂研究室M2の伊藤勢来です。
2026年度 建築設計B1の第二課題「小中一貫校」最終講評会が、昨日7月28日に開催されました。第一課題「水辺の建築」に続き、TAとして関わってきたこの一年の授業も、いよいよ最終回。今回はその様子をお伝えします。
課題について
課題テーマは「個別最適で、協働的な学びの場とは?これからの小中一貫校」。近年、少子化や教育制度の変化を背景に、小中一貫校の整備が全国で進められています。校舎を一つにまとめる「施設一体型」と、既存の校舎を活かす「施設分離型」という二つのあり方がある中、本課題では学生自身が卒業した小学校または中学校の敷地を対象に、AIやICT環境の普及、社会の変化に対応できる新しい学びの場を提案するという内容でした。受講生17名が、それぞれの原体験の詰まった敷地とじっくり向き合い、最終講評会には力の入った作品が並びました。
受賞作品のご紹介
えんつりー賞|渥美太雅「建物と人々の紡ぎ」


浜松市中瀬の中出小学校の敷地に、知識と生徒の活動が身近にあふれる学校というコンセプトで設計。西の住宅街と東の畑を結ぶよう校舎を道路に対して斜めに配置し、入口から中庭を抜けてグラウンドまで視線が通るようにしています。分棟型の校舎を学びの空間でつなぎ、性格の異なる3つの中庭を遊び場や地域交流の場として計画した点は、学年のまとまりと敷地全体の回遊性を同時に扱おうとする意欲を感じました。中庭それぞれの「性格の違い」をもう一段強く形にできれば、さらに説得力が増したはずです。
えんつりー賞|松浦悠貴「もくもくの里」


浜北区のマンモス校・浜名中学校の三角形の敷地に、RC10m格子の柱で鉄骨のスラブを支える構成を提案。吹き抜け「もくもく」を軸に、最下部を図書エリア、2階を実習スペース、3階を議論・発表のスペースとして積層させ、教室だけ天井高を3000にして安心感を持たせています。垂直方向に学びのフェーズを積んでいく発想は面白く、模型としての立体感も魅力的でした。一方で、この構造と空間の関係を平面計画までしっかり一致させられると、コンセプトの強度がもう一段上がる案だと思います。
長谷川賞|山口來輝「居場所は教室の前に」


浜松市中心部から少し離れた、人とのつながりを大切にする住宅街の敷地に学校を設計。教室という四角い箱以外にも一人になれたりつながれたりする居場所をつくろうと、膨らみを持つ曲線の形状とし、ずらして積むことで軒の高さごとに光と風の違いを生んでいます。住宅街と遠州鉄道をつなぐスロープや、交差点の休憩・展示スペースなど、地域との接点の作り方も丁寧でした。四角から不定形へと踏み出した思い切りの良さが、この案の一番の強みだと思います。
長尾賞|宗像美咲希「The SPINE-人・学び・地域をつなぐ一本の背骨-」


清水インター近く、登校時間の交通量が多く高齢な歩行者も多い敷地に対して、学校内を通り抜けられる空間を提案。地域住民も利用できる南北一本の動線を中央に通し、図書館・食堂・特別教室をほぼ1階にまとめて配置することで、子供の活動が自然と見える構成にしています。教室を1教室分ずつずらして廊下に面する部分を増やす操作も、交流の生まれ方として素直で好感が持てました。「背骨」というコンセプトが、動線というかたちではっきり空間に落ちていた点が良かったです。
脇坂賞|山本佳奈「未来へ続く軌跡」


大和武尊伝説の残る敷地で、地域の歴史や文化を未来へ受け継ぐことをテーマに、子供たちが新たな軌跡を刻む小学校を設計。教室をずらして生まれる隙間や浜松産の天竜杉のテラスを開放的な学習空間とし、南北の道は地域住民の散歩道、東西の道は児童の通学路として交差点に交流を生む動線を計画しています。きれいな構成である一方、地域住民が通る道がただの通路になってしまっているのが惜しく、外部との関係性ももう一段作り込めるはずで、単純な円形でも金沢21世紀美術館のように多様な表情は生み出せます。テラスをなぜ開放にしたのか、閉じる・開くの判断や活動が交わる場所の設計をもう少し詰めてほしかったです。
えんがわ賞|杉山秀響「集いの丘」


森に囲まれた丘状の敷地で、周囲の宅地化が進む中、自然を感じながら楽しく過ごせる学校を目指した提案。高低差を生かした展望スペースを地域住民にも開放し、渡り廊下でつながる特別教室棟は放課後開放して、小中学生が自然に交流できる構成としています。学年ごとにペアで配置した円形教室棟という発想はユニークで、環境の良さを素直に活かそうとする姿勢が伝わってきました。
レビュー
今回全体を通して感じたのは、みんなそれぞれの母校という「原体験」を敷地に選んでいたということです。他大学では同一敷地で計画するのが一般的な中、教育制度や学校のあり方が変わりゆく中で、名だたされてきた建築家が現代の教育現場に必ずしも合うとは限らない今、設計者自身が敷地や利用者の受け止め方が一致しない現実を突きつけられる経験になったと思います。
コンセプトと形態がしっかり結びついていた案と、そうでない案の差もはっきり見えました。動線や断面のどこかにコンセプトが必ず形として落ちていた案は説得力が強く、逆に言葉としては魅力的でも、模型や図面の中で空間体験として現れていないと、どこかふわっとした印象で終わってしまう。ここは第一課題の講評でも感じたことと同じ課題だと思います。この夏休みは、実際に建築を見に行ったり、学外の人と関わったりする中で、自分の中に多様な視点を増やしてほしいと思います。敷地や利用者への想像力は、机の上だけでは深まりません。
そして個人的なことですが、4年生でSA・TAを始めてから3年目となり、今回がおそらく最後のTAになります。その締めくくりにこのB1の課題に関わることができて、本当に良かったと思っています。設計は答えのない問いに自分なりの答えを出す作業で、その積み重ねが卒業設計やその先の研究、実務にもつながっていくはずです。皆さんのこれからの設計を楽しみにしています。
【アーカイブシート】
