2024.01.22

環境共生住宅の原点「聴竹居」@京都・山崎、訪問

21JAN2024
念願叶ってようやく聴竹居に訪れることができました。
京都・山崎駅で降りて、妙喜庵・待庵を通り過ぎて、徒歩でアプローチ。

1928年竣工ということで、築95年。藤井厚二が設計を手がけた5回目(!?)の自邸で、晩年の10年を過ごしたといいます。

日本における環境共生住宅の原点とされ、深い軒(110cmとのこと)による夏の直射日光の遮蔽、冬の日射取得、小屋裏への換気ルート確保のための手動の開口、タタミの小上がりと板間の段差を利用したクールチューブ、横長連窓(窓はナント全部で36ヶ!)、など工夫の数々を体感できました。

欧州に目を向ければ、時はモダニズム建築勃興の時期。ル・コルビュジエのサヴォア邸の設計が開始された1928年に、藤井は聴竹居で環境工学を基にした独自のデザインを展開したことになります。

プランニングとしても、応接室が南、家族室が北、という平面計画にメスを入れ、居間を中心とした放射状の平面としつつ、客動線と家族動線が交わらない巧みな計画がなされていました。

土地が1万2千坪という驚愕の広さですが、実家が広島・福山の造り酒屋で藩の御用商人だったこと、藤井が次男だったことから、兄からの援助も大きかったようです。

ディテールでは、半円の意匠、線のずらし、45度振った造形、などにアールデコやマッキントッシュの影響を感じますが、実際にヒルハウスで用いられた時計が造り付けで組み込まれており、真壁の内観と不思議と調和していました。

さらに、和紙を用いたペンダント照明、ブラケット照明が部屋ごとに個別にデザインされ、あわせて机・椅子といった家具もオリジナルで製作されており、アルネ・ヤコブセンに通じる「ライフスタイルデザイナー」としての藤井の姿勢を体感出来ました。

三川が合流し、淀川が大阪方面に流れるビューを楽しめる横長連窓ですが、引き違い建具の下枠に切られた溝の深さが縦枠側では浅くなり、さらに木サッシの縦框に召し合わせを設け、建具の密閉度が高まる工夫がなされているところに藤井の室内環境への配慮が伺えます。

その他、伊東忠太の影響や、アプローチにおかれた怪獣、武田吾一との関係などなど興味は尽きませんが、それらを説明されるボランティアの方々(近所にお住まいの建築の素人!?)の説明が素晴らしく、みなさんの藤井厚二、聴竹居への愛がスゴかった。