バレックス@三浦市、オフグリッド住宅調査
14JAN2024
東京都内で主に戸建て住宅の設計施工、不動産業を生業とする企業、株式会社バレックスさんのオフグリッド住宅にヒアリングと見学に、B4の戸塚君、3年生の梅田君と共に伺ってきました。
場所は神奈川県三浦市、相模湾に面した絶景が広がる敷地です。
このオフグリッド住宅はバレックスの代表で都内在住の大本社長の別荘として使われており、同社でデザイナーを務める渡邊氏も同席して、ヒアリングに応じていただきました。渡邊氏は、広島工大の村上徹研究室を卒業された後、東京理科大の小嶋一浩研究室を修了され、院修了後に設計事務所を立ち上げ、在学中に勝ち取られたコンペのプロジェクトを進めるためにシーラカンスアンドアソシエイツのJVとして設計活動をされ、後にオランダ・ロッテルダムに渡りOMA/Office for Metropolitan Architectureにてインターンとして勤務後に帰国し、山本理顕設計工場でアトリエ生活を送った後、不動産の重要性を認識し、バレックスさんに入社するとともに、社内に建築士事務所ACHIBLASTを設立されたパワフルな設計者です。
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設計当時、売電ばかりだった状況で、「太陽エネルギーだけで暮らせる住宅」を実現するために、発電した電力を蓄電し、災害に強いレジリエンスハウスを目指したそうです。しかし、担当の設計者、技術者レベルでは、システムを構築する面白さに大いに盛り上がるものの、電力網から切り離すことをいざ実現しようとしたときに、電気事業者、経済産業省、報道機関など、様々な政治的な困難にぶつかったとのことでした。その顛末は、3.11を仙台で経験した私としても、現実的に現在、能登半島での被災生活を強いられている方々が大勢いる状況からしても、歯がゆさとともに深く考えさせられます。
そうした状況にもかかわらず、大本社長の経営者らしいパワフルな思想から「地域が停電しても生き残るオフグリッド住宅」が実現しました。
屋根には太陽光パネル17kw、別棟で蓄電池72kw、ガスはプロパン、プール兼貯水槽という設備システムで、当初は海水を引き込み、浄水器で真水にするシステムを大マジメに検討したということでした。事例調査では鉛バッテリーが多い中、リチウムイオンバッテリーを採用し、別棟の建屋の扉がなぜか崖側を向く経緯もまた、法的に未熟な日本の現実を思い知らされました。
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北に海を望む斜面地で、北垂れの斜面地というと不利に思えますが、すぐそこに見える海からキラキラとした光が天井で反射して、光の揺らぎを感じられるとともに、北向きながらも独特の明るさ感を感じられる居心地のいい空間でした。斜面地から切り土を二段にして、迫り出すように設定された二層の床に片流れの屋根を設け、さらにデッキを海側に設けた構成は本当に気持ちの良い空間でした。
ちなみに、帰りがけ、三浦半島から駿河湾越しの富士山を初めて見ました。
大本社長、渡邊さま、ありがとうございました!