2023.9.11 京都府立陶板名画の庭
暦採館を後にした我々は、住宅街をめぐり京都府立陶板名画の庭を訪れた。
地下鉄北山駅を出てすぐ、突如表れる。「陶板名画の庭」という名前の通り、建物というより庭園であり、他に類をあまり見ない陶板画を展示した屋外美術館。建物は安藤忠雄の代名詞、コンクリート打ちっ放しとガラス窓によって構成され、無機質で隣の植物園の緑と開けた空との対比により、人工物感が強く感じられた。
まず、入場すると、まっすぐ伸びた通路の先に、コンクリートの大壁と、異なる角度で突き刺さった大梁、ガラスがはめ込まれた鉄骨のフレーム目に入る。ただまだ先は見えず、水の落ちる音だけが聞こえる。通路の左手には、最初の作品モネ作「睡蓮・朝」があり、水面を描いた作品がが水面下に展示されていて面白い。進んでいくと徐々に内部が見えてきて、スロープと階段で地中に潜っていく動線は、様々な角度で作品を鑑賞することを可能にしている。通路の途中では、滝の落ちるすぐ横を通過したり、天井の低い部分があったりなど、床や壁、水の音、光によって印象的な空間が生み出されている。陶板画と建築が一体となって鑑賞作品になっている。
作品は、水上に鉄骨の額縁や外側にコンクリートの枠があるような展示がされており、通常の美術館と異なる視点で作品を見ることができよう工夫が見られた。中でもほぼ原寸大のミケランジェロ作「最後の審判」は、様々な角度から鑑賞できるうえ、滝の壁とコンクリートの壁による閉塞的な空間の中で異様な迫力が感じられた。幾何学的な造形は、屋根に覆われていないことで地面からフレームが立ち上がり独立していることで独特な空間をつくりあげ、シンプルな直線動線で人々を幾何学の中に入り込ませる。水の汚さと臭いは少々気になったが、それもまた一興。
屋外の地中に潜り込む鑑賞空間には最初驚いた。作品と建築が一体となり独特の世界観を作り出している様と安藤忠雄らしい自然光と素材を効果的に利用しシンプルで洗練された空間を肌で感じることができた。作品数は8作品と少ないが、思いのほか時が経過していた。100円でこんな空間体験ができるのはありがたい。次は季節を変え晴れた日に訪れたい。
田井研究室所属 B4 稲葉洋人