2023.11.19

2023.11.17 第2回建築夜会伊藤孝仁さんレクチャー

第1回建築夜会田井ラボ発表に続き、AMP/PAMの伊藤孝仁さんをお呼びし大日本報徳社にて講演会を開かせていただいた。参加者の半分は理工科大学の学生であったこともあり、序盤では大学時代の作品や経験を聞かせていただいた。そこでは現在の活動にもあるように、実際に街に出てコミュニケーションをとりながら場づくりをする一貫した姿勢が見られた。お話の中でたびたび「手触り」という言葉が用いられたように、自身にグッと引き寄せて空間(建築的、都市的)を思考することは現代における「まちづくり」の根源的なところを指しているのだろう。

手掛けるプロジェクトにおいても無理に建築面積を増やすことを考えず、時に減築していき、周辺環境と緩やかに繋げていこうと試みる。建築が常に都市の一部であるというメッセージは、リサーチシートの関係図を見ても明らかであった。しかし、その様な循環系の中に建築を位置付ける場合、建築家としての作家性というのは見えづらい。学生間でも「まちづくり系」と括られてしまう様な曖昧な存在にある。ある種、建築が「淀み」となるよう思考することは建築家のエゴなのかもしれないが、その中に明確な建築家像が現れやすいことも確かである。建築計画の前段となる手法論のところでしかその人の個性が現れない、この新たな建築家像をどのように位置付ければ良いのか難しい。晩年期の大物建築家たちに見られる様な(空間における)凝り固まった作家性というのは趣味の延長でもあり、本来必要のないものなのかもしれない。一方で、そんな建築家像に憧れを抱いていた世代と、ハッピーな脳内にある連中にいきなり水をぶっかけ、「はしゃぐな!」と言わんばかりに登場してきた新たな世代にあるのだろう。

土をアスファルトに変えていった時代から、どのようにして土に返していくのか。“人が関わりの持てる余地”を生み出す役目に徹したこの建築家像は意義深いもので、考えさせられる時間であった。

 

M2 疋田