2023.04.14

2023.0201 修士論文発表会を終えて

2月1日、修士論文発表会がありました。

意匠系研究室からは6名が研究報告を行い、様々な建築の切り口から数多くの知見を得ることができました。
我が研究室では4名が発表を行い、いずれにおいても「中間領域」を軸に置いた研究として展開しました。
中間領域についてざっくり説明すると、それは「何かと何かの間の領域」であり、外との中をつなぐ縁側や土間、上の階と下の階をつなぐ階段や吹き抜けのような空間があげられます。
そして、この「中間領域」は非常に抽象的な領域であり、毎度の事ながらこうした報告会では理解され難いものとなってしまっています。
例えば、単に設けられたベランダは外と中の中間であるものの、中間領域として定義していいのか怪しいし、ワンルームのマンションは中間領域なのかという問題があったりします。
今回の発表でも中間領域の意義について明確に断言し、議論し、発展につながることはなく、先生方から頂く多くの意見は批判的なものでした。
そもそも、建築家が思う「中間的な空間」はそれぞれ定義も違うことから、
我が研究室においては引き続いてこの領域の存在意義について明確にし、
こうした報告の場で全員の先生方からの支持が得られ、かつ、論理的な議論に展開していくことを目指すべきなのだと感じます。
また、菊竹清訓の著書「か・かた・かたち」にて、
「機能をすてた空間こそ、もっともよく機能を発見することができる空間であるといえる。したがって言い換えれば空間は、機能を発見しうるような空間でなければならないのである(38p)」と記述されている。
このことから中間領域は、設計者によって固定化された機能的な空間ではなく、生活者自らが生活の中で生み出し、なんとなく輪郭を帯びた空間が結果として中間領域となり、設計者はそれを促す指導者であるというものではないかと考えられます。
これは先ほどのベランダは中間領域なのかという問いの解答にもなるかと思いますが、
元々は中間領域は空間が先行して作られるものだとの認識でしたが、実は行為が先行して領域が形成されているのではないかと考えられます。
現に僕の研究では由比の町家における間取りや使われ方について調査を行いました。
町家には土間が敷かれた「ニワ」と畳の間としての「オイエ」があり、注目したいのはオイエの使われ方が町家それぞれで違うというところです。
食事をする場所、寝る場所、まったりする場所、それぞれがバラバラであり、主にそれはキッチンや生業、家族構成などの条件によって決定していると考えられます。
つまりオイエには決まった機能が無く、生活者自らが考えて使うような空間であると考えられます。
もしここにLDKなど決まった機能が備わっていたらLDKでしかないですが、襖を開けたら一つの部屋になる空間に生活者が機能と領域を与え、生活を続けているのこそが中間領域の本質なのではないかと考えました。
だいぶ話がそれましたが、田井研究室としては今後も中間領域論についての議論を深めて行ってほしいなと思います。
加えて、後輩達にはスケジュール管理の徹底だけは最優先で進めなさいと言いたいと思います。
それでは、僕は就活してきます。
M2 小川歩夢