2026.11.03

広島建築学会【後編】

9月8日~11日に広島で開催された日本建築学会大会に参加し、研究発表の聴講と建築見学を行いました。

学会での研究発表を通して建築に関する知識を深めるとともに、広島の歴史的建築や著名な建築家の作品を実際に訪れ、建築の魅力に触れられる貴重な機会となりました。

今週のブログでは、全4日間のうち、3日目の市内の建築見学について紹介します。

 

【3日目】市内の建築見学

■ 広島市環境局中工場

広島市環境局中工場は、谷口吉生が設計し、2004 年に竣工したごみ焼却施設です。一般的に隠されがちなごみ処理施設をあえて開放し、大きな焼却場のヴォリュームや煙突など大変迫力がありました。

一方、建物中央には平和記念公園から海へ向かう都市軸を継ぐように、ガラス張りの見学通路「エコリアム」を貫通させています。見学者は、緑の植栽とともに、ガラス越しに実際に稼働する焼却設備や配管を眺めながら建物を横断し、その先の海が見えるデッキまで向かうことが出来ます。


ごみや環境に対する市民の意識を変化させる空間として計画されていました。工場内部を隅々まで見学ができ、工場を開くという試みを感じました!

 

■ 広島平和記念資料館・広島平和記念公園

広島平和記念資料館および平和記念公園の特徴は、平和大通りと直交する南北軸を設定し、その軸上に資料館、慰霊碑、原爆ドームを配置することで、都市と公園を軸線的な配置で計画したことです。

資料館の展示や原爆ドームから当時の原爆による被害が鮮明に想像出来ました。当時は、想像もつかないほど大変悲惨な状況であったことを感じました。平和について考える重要な時間となりました。

 

■ 広島市西消防署

広島市西消防署は、山本理顕が設計した平和大通り沿いに位置する消防・救急の複合施設です。最大の特徴は、約 2,400
枚のガラスルーバーで建物全体を覆い、内部の消防活動を外部から見ることが出来る点です。

建物中央には大きな吹抜けのアトリウムを設けており、消防隊員の活動が建物の内部で入り混じっています。さらに、展示ロビーや見学テラスを設けることで、市民が消防活動を身近に感じられる構成としていることが分かりました!

従来の閉鎖的な消防署とは異なり、都市にとって消防という必要不可欠な機能を開くことで、市民との接点を生み、安心感を生み出す防災拠点となっていると感じました。

■ 世界平和記念聖堂

世界平和記念聖堂は、被爆者の慰霊と世界平和を願うフーゴ・ラッサール神父の熱意によって計画されました。聖堂は、鉄筋コンクリート造3階・地下1階建てであり、三身廊式のバシリカ教会堂です。

花弁型の丸屋根が特徴的な小聖堂と洗礼堂が接続されていました。

 

■ 基町高等学校

基町高等学校は、上部の大きなクラスボリュームに対して、地上部分は二階程度の大きなピロティを設けることで、建物下に活動の場を計画していました。ピロティはフェンスで明確に閉じるのではなく、チェーン程度の緩やかな境界によって外部と接続されているのには驚いた。
その場所で生徒がダンスやストレッチを行う姿も見られ、学校の日常的な活動がみられた。

 

■ 広島基町・長寿園高層アパート

広島市の基町・長寿園地区では、原爆投下後の深刻な住宅不足を背景に、木造のバラックが密集し、原爆スラムと言われる居住地や闇市が形成されました。1960年に入ると老朽化や衛生、防災上の問題を抱えその改善が大きな問題となり、不良住宅の解消、住宅不足への対応、公園・緑地の確保、生活関連施設の整備を一体的に行う基町地区再開発事業を計画し広島基町・長寿園高層アパートが建設されました。

住居部分を見学する様子。

4,566戸の高層住宅が整備され、商店街、学校、保育所、集会所なども併設されました。

商店街内の食堂を見学する様子。

3日目は、広島市内の建築の見学を通して、広島の戦争による深い歴史・背景や現在の広島市の暮らしなど、1・2日に引き続き多くの発見や学びを得ることができました。

広島の今を建築という面から見つめることで戦争という歴史について考え、平和を考えるとても充実した3日目でした。

 

M2 鈴木